人のために作られた犬たちの中には、人が世話しなくては生けてはいけない、そういう類いの犬がいた。つまり、誰もが言うように、人が作るものすべてが人の似姿なら、人もまた同じなのだろう。
無意味に広大な砂漠を、延々とわたっていくたった一本きりの道路は、私にその事をはっきりと悟らせた。遠くから響くマンドリンの音は車のラヂオから流れる音楽で、肩を愛撫する感触はカークーラーの息吹でしかなく、微かな風は車の推進が作る産物、砂が青く光るのはドライブインの看板によってではなく月の照り返しだった。滅びた文明を行く感覚。
今ある車と、ガソリン、それに幾つかの身の回りのもの、それが自分の全財産だと考え、砂漠の道を走りながら、こうなった経緯を想うと、犬と人の哀しい歴史に思考を飛ばさずにはいられない。
月と地面の間をゆっくりと浮かぶ、人工衛星の黒いシルエットを私は恨めしく見詰めて、車を走らせ続けた。
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