■一千一頁物語

一瞬を凍らせる短歌やスナップショットのように生きたいブログ

2015年07月

本の一ページを紹介するブックレビュー一千一頁物語 SSよりも瞬間的な創作小説SnapWritte スナップショットの感覚、短歌の精神で怖いものを探求したい…願望

□スプートニクの黄色い耳



 人のために作られた犬たちの中には、人が世話しなくては生けてはいけない、そういう類いの犬がいた。つまり、誰もが言うように、人が作るものすべてが人の似姿なら、人もまた同じなのだろう。
 無意味に広大な砂漠を、延々とわたっていくたった一本きりの道路は、私にその事をはっきりと悟らせた。遠くから響くマンドリンの音は車のラヂオから流れる音楽で、肩を愛撫する感触はカークーラーの息吹でしかなく、微かな風は車の推進が作る産物、砂が青く光るのはドライブインの看板によってではなく月の照り返しだった。滅びた文明を行く感覚。
 今ある車と、ガソリン、それに幾つかの身の回りのもの、それが自分の全財産だと考え、砂漠の道を走りながら、こうなった経緯を想うと、犬と人の哀しい歴史に思考を飛ばさずにはいられない。
 月と地面の間をゆっくりと浮かぶ、人工衛星の黒いシルエットを私は恨めしく見詰めて、車を走らせ続けた。

□影で釣る

 私にはどうしても焼きたてのパンが必要だったから、私はなるべくバカに見えるよう努力した。バカで、誰かを待っている。私は私を餌にした釣りビトだった。肉片を一欠片、削って針で突き刺す。
 窓ガラスに写った私は明らかにバカで、男でも女でも、なんて素敵なバカなんだろう!と思うに違いなかった。

ジョーカー星団全星統一模試星団史C 史実のFSS

ジョーカー星団のみなさん、センター星団史Cの模試の問題と解答を公開しました!
今年受験する方はもちろん、歴史の復習をしたい、という方も挑戦してみてください♪
下のファイルビュワーが動かない方はDLリンクからPDFをダウンロードしてください(PDFファイルが開きます) 
注:( コメント欄でご指摘のあった通り、現在の歴史解釈では大問1の問3で触れられている詩女と剣聖の関係には多くの疑問が投げかけられています。
特に剣聖カイエンとフンフトの関係は若干の混乱があり今後の歴史資料の展開が待たれますが、ひとまず問題はこのままとさせていただきます。ご了承ください。


DLリンク (PDFファイルを開きます) 



もしもファイブスター物語の世界にセンター試験があったら…という妄想…。
FSS13巻発売までの繋ぎとして、楽しんでいただければ幸いです。
間違いなどあれば、コメント欄で指摘していただければ修正します。




単行本だけで歴史試験作れるFSS怖い。
13巻早く発売されないかな…。

山尾悠子『夢の遠近法』








作者:山尾悠子
書籍名:夢の遠近法
頁番号:194p
山尾悠子氏の短編集『夢の遠近法』収録の掌編集『童話・支那風小夜曲集』の一編『恋物語』の一頁です。
熱っぽい病に臥す稚い娘が、西洋から流れた刺客と邂逅する場面。伴奏は恋猫の鳴き声。
シノワズリの濃い馨りに噎せる読み手の息が、熱を孕んだ娘の息に同調して
シノワズリを見つめる読み手の目が、娘を見つめる刺客の目に同調して、ゆきます。
この濃密で、緻密な彫刻文体は、本の全頁を覆い付くし、読み手は溺れればいいだけ。
私はだれ?あなたはだれ?啄彫された恋物語の、珠色の玉の一頁。

山尾悠子は京都出身の伝説的な作家。
明瞭に描かれた文章が、幻想を色濃く描き出す、日本幻想文学の第一人者です。
年代に幾つかの短編と長編を発表したのち、地かに潜伏していましたが、近年新刊、文庫版、雑誌連載など、復活を遂げていらっしゃいます。
主な作品は『山尾悠子作品集成』で読めますが、近年本『夢の遠近法』(文庫本/単行本)がその軽量版として販売されています。
『ラピスラズリ』は冬に眠る貴族の物語と、現代日本に暮らすその末裔を描いた長編。文庫版アリ。
『歪み真珠』は最新の短編集。歪み真珠は美術用語のバロックを意味する言葉です。傑作。

□ガッチャマン 立川の雲

 そのアニメのタイトルを、彼は思い出せないけれど、彼はそれが好きだった。カラフルな世界なのに、話は重く、子供の頃の彼には社会的な物語に見えた。古い名作のリブートだった。今ではそのリブートの方が有名なスタンダードとなっている、という話を、聞いたこともあったな、とそんなことも思い出したけれど、名前は思い出せなかった。
 唐突にそれを思い出したのは、今彼がたっている立川の駅前の広場が、そのアニメによく出てきたからだ。二つのアーチが、何も支えず何にも支えられず、ただ無意味に地面から付き出て組み合いながら、広場を占拠していた。広場には人が少なかったけれど、東京都心に比べれば、という意味で、むしろ広場の大きさには、適切な人の密度のように、彼には感じられた。
 彼はしばらくそうして広場でたっていた。つまりはそこで彼は待ち合わせの約束をしていたので。ぼうっとしていると、彼は二人組の女性カップルに話しかけられた。広場のオブジェを背景に、写真を撮ってほしい、と彼女たちは申し訳なさそうに言って、彼に古いポロライドカメラを手渡した。
 写真を撮り終えると、カメラが真四角な紙を吐き出して、次第に紙の上に画像が現れた。彼はぽろらいどカメラの実物を観たことがなかったから、魔法みたいだ、と思い、ぽろらいどカメラしか知らない人間からしたら、デジタルカメラこそ魔法だろう、と思った。その珍しさと懐古趣味を褒め称える言葉を添えて、彼は彼女たちに、カメラと写真を手渡した。
 彼女たちは礼をいって、序でにここへ来たのは古いアニメのロケ地を訪ねるためだ、とも付け加えた。彼が何となく儀礼めいた空気を感じて、そのアニメのタイトルを尋ねてみると、ガッチャマンクラウズというタイトルの作品だと、彼女たちは言った。そのタイトルこそ、彼が思い出せないでいた物だったけれど、彼はなにも言わず、二人と別れて、待ち合わせの時間までどうしようかと思案を始めた。

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