作者:Orcaorca
書籍名:Elephant 初回限定盤特製ブックレット
頁番号:5,6ページ

 枯れた芒野を、黒いマントを介して手をつなぎ、駆ける黒いスーツの青年二人。少年のようなその青年のイメージは、何処か稲垣足穂の小説を思わせる。
フォークトロニカバンド、OrcaOrcaのファーストアルバムElephantの特典ブックレットの一ページ。
 PVのスチル写真なのだけど、青年の筋肉と少年の骨が同居したようなこの写真のイメージは、OrcaOrcaの音楽のイメージで美しい。
 冷たくなれる一ページ。





 OrcaOrcaのアルバムElephantに収録された音楽は、タバコのイメージ。錆びついて、饐えた稲垣足穂。アルバムの曲は一つ一つバリエーションにあふれているのだけど、そのどれもが、タバコの質感を持っているような気がする。
刺激と、重く漂う雲。小さく指先に踊る火。
 錆びた色の鉄絃。狭さを持った空間を感じさせる音響のリバーブ。
雨のように繰り返されるドラム。外から聞こえる雑踏の旋律。
頭の中で聞こえる不吉な音。垂直に降りてくるエレクトロなサウンド。
 Elephantの音楽を聴く時に、自分は何処かに閉じ込められて、タバコの煙だけを見つめている。
 何とも言えない、タバコの匂いとしか形容できない香りの漂うアルバム。
インストゥメタルだけど、とても聴きやすくて、入りやすい。
 アルバムを実際に買って、フルで通して聴くと、想像以上の世界が見えてきます。
 好きです。




今回引用したブックレット付きの限定版


Orcaorca
2014-05-03
ブックレット無しの通常盤